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HQ_7 歩行パラメーター等を利用した運動介入は一般労働者のメンタルヘルス疾患の発症予防に有用か?

本記事の対象者
(●)サービス利用者向け(個人ユーザ・産業保健スタッフなど)
(●)サービス事業者向け(開発企業・サービス提供関係者)
)学術関係者・行政担当者向け

 

解説動画

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要約

このヘルスケアクエスチョン(HQ)におけるシステマティックレビュー(SR)では、一般労働者を対象としたデジタルヘルステクノロジー(DHT)を用いた運動介入に関するランダム化比較対象試験(Randomized Controlled Trial: RCT)に関する文献検索を行い、14件が抽出されました。これらの運動プログラムで最も多かったのはウェブベースあるいは電子メール、SMS(Short Message Service)で人が介在するカウンセリングや運動介入でした。また一部のプログラムでは、スマートフォンアプリケーションによる介入や加速度計を使用して身体活動のフィードバックを与えるプログラムなどが確認されました。DHTの運動介入効果としては、精神症状である抑うつ症状並びにネガティブ感情(ともに介入直後)の改善に有効であることが示されました。一方で、主観的ストレスの軽減、ウェルビーイングや精神健康関連QOL、仕事のパフォーマンス向上などの効果は確認されませんでした。

推奨

推奨文 メンタルヘルス不調の一次予防対策として、一般労働者に対してDHTを用いた運動介入を行うことを推奨する。
推奨度 ①行うことを強く推奨する
②行うことを推奨する
③行わないことを推奨する
④行わないことを強く推奨する
⑤エビデンス不十分のため推奨を保留する
合意率 87.5% (100%)
エビデンスの強さ C(弱)

推奨の見かた

1.何を調べたの?

近年、スマートフォンなどで手軽に使用できるメンタルヘルス対策用のアプリや、インターネットを介したメンタルヘルスに対するサービスが数多くリリースされています。一方で、これらのアプリやサービスで、メンタルヘルス症状の改善効果が検証されているサービスや製品は限定的であり、現在市場に出回っているものに本当に改善効果があるかどうかについては明確ではありません※1。
これまでの学術研究において、運動介入はメンタルヘルス症状の改善効果があることがわかっています。しかし、運動をベースにしたインターネット介入やアプリによる介入などが労働者のメンタルヘルス一次予防について与える影響に関する学術的エビデンスは多くないのです。
そこで、私たちはシステマティックレビュー(SR)やメタアナリシス(MA)という手法を用いて、デジタルヘルステクノロジー(DHT)を活用した運動介入のメンタルヘルス改善効果について調査することにしました。
今回は、DHTを用いた運動介入に関連する14の学術論文のSRとMAの結果を報告します。

2.どんなことが分かったの?

 論文を調べるときは、専用の学術データベースに「検索式」と呼ばれるキーワードを入力して、ヒットした論文を精査します。DHTを使用した労働者へのメンタルヘルス介入について検索すると37851件の論文が見つかりました。
この論文を様々な適合基準と照合した結果、最終的には14の論文※2-15が労働者を対象としたDHTによる運動による介入とメンタルヘルス一次予防効果を示した論文として残りました論文選択の過程は解説コラム「PRISMAフローチャートって何?」をご参照ください

DHTを用いた運動介入直後の抑うつ症状・ネガティブ感情をアウトカムにした文献は4件で、そのうち2件で症状の有意な減少が報告されていました。統合した介入効果(Cohen’s d[95%信頼区間])は、-0.51(-0.75から-0.27)と抑うつ症状・ネガティブ感情の有意な軽減効果が確認されました。一方で他の尺度である主観的ストレスで統合された効果量は-0.24(-0.53から0.04)、ウェルビーイングの効果量は0.39(-0.04から0.81)、精神健康関連QOLは0.12(-0.05から 0.28)、仕事関連アウトカム0.02(-1.10から0.14)と有意な効果は認められませんでした。

このSRおよびMAの結果、DHTを用いた運動介入については、労働者の抑うつ・ネガティブ感情を改善させることが明らかになりました。

以下の図内フォレストプロットも併せてご参照ください。

HQ7_Ex2

3.この記事はどんな役に立つの?

これらのエビデンスより、DHTを用いた運動介入は、労働者の抑うつ・ネガティブ感情を有意に改させることが確認されました。従って、メンタルヘルス不調の一次予防対策として、一般労働者に対してDHTを用いた運動介入を行うことを推奨します。

なお、本推奨はヘルスケアにおける予防効果を対象としているため、基礎疾患がある対象者は想定してません。対象者に基礎疾患がある場合は、運動介入の適用について慎重な判断が必要です。

また、気を付けておかねばならないことは、この記事が示している効果は、あくまで限られた学術論文で評価されたプログラムが示す効果であるということです。つまり、巷にあふれている学術的な効果評価がされていないマインドフルネスに関連するアプリやサービスの効果を全て保証する結果ではないことに注意する必要があります。

更に詳細に知りたい方は

   

 

エビデンス総体表

■運動介入のエビデンス総体(PDF)

結果のまとめ(SoF)表

■運動介入のSoF(PDF)

Future Research Question / Limitation

■Future Research Questionは>>>こちら

推奨決定のプロセス(合意形成プロセス開示)

総合指針をご参照ください。

本記事に対するステークホルダによる外部評価(SR)