トレンドリサーチ(TR)チーム
トレンドリサーチ(Trend Research, TR)では、多様なステークホルダーの利用実態や利用ニーズ、技術・製品・サービス動向などを調査します。榎原班、江口班の2つのチームがあります。R4-R5年度にまとめた27のヘルスケアクエスチョン(HQ)の中で、該当する19件のTR-articleの作成と公開を担います。
TR1:榎原班
最終的な指針の社会還元・実装を見据えたHQの設定およびスコープの作成の基礎資料を提供するために必要となるデジタルヘルステクノロジ(DHT)の体系分類を1) サービス利用者、2) サービス事業者、3) 学術関係者の三者視点で整理しています。DHTを活用した予防介入ガイドラインが公表される頃にはout of dateな技術となってしまうことのないようにDHTの新技術を定期的に確認し、指針改訂方針へ反映させるための新技術の動向をリサーチしています。
アジャイル型開発の推進・運営に必要となる基盤の整備ならびにTR-articleのフォーマット案の作成、外部評価とステークホルダ評価実施方法・評価基準の体制案についても草案をまとめています。
TR2:江口班
DHTの産業保健応用の現状把握と提供価値を明確化するために、各ステークホルダの皆様と定期的に意見交換を行っています。健全な産業保健の発展と社会浸透のために、労働者のメンタルヘルス予防に対して適切なDHT介入のあり方を社会に示す必要があります。そのために、1) DHT介入の現状と課題の把握、2) SRチームで行われる科学的エビデンスの整理への各ステークホルダからのフィードバック、3) SR/TRチームの成果を踏まえた今後のあるべき姿の提案を行い、TR-articleに反映していきます。
DHTの重要なステークホルダである、産業保健スタッフ、ヘルスケアサービス事業者、研究者のそれぞれについての分科会を設置して、定期的に意見交換会を行っています。また、サービス利用者については、1000名規模の定期的なオンライン調査を実施し、指針作成で重要となるサービス利用者のニーズやサービス利用状況の変化を把握しています。
システマティックレビュー(SR)チーム
DHT介入の一次予防・健康増進効果に関するシステマティック・レビューおよびメタ解析を実施し、現在利用可能なエビデンスをまとめ、サマリーレポートを作成します。今村班、金森班の2つのチームがあります。R4-R5年度にまとめた27のヘルスケアクエスチョン(HQ)の中で、該当する8件のSR-articleに関連するシステマティックレビューを実施します。
SR1:今村班
メンタルヘルスの認知行動療法のデジタル介入など豊富な経験に持つ今村特任准教授がリーダーを務めます。世界保健機関(WHO)からシステマティック・レビューの委託を受ける実績を持つ「東京大学職場のメンタルヘルスレビューチーム(TOMH-R)」が中心的にレビューを実施します。ガイドライン作成チームにて設定された27のHQについて、労働者の精神健康アウトカムに対するデジタルヘルス介入の一次予防・健康増進効果についてのシステマティック・レビューを現在行っています。
SR2:金森班
日本産業衛生学会内において、若手研究者の会を主幹してきた実績を持つ金森講師がリーダーを務めます。金森班では、次世代人材育成の機能も併せ持ちます。産業衛生学会内の若手研究者の会および遠隔産業保健研究会から産業医・産業看護師・作業環境測定士など他職種連携による若手研究者をレビューチームメンバーとして招集し、SRチームに参画頂くことで産業保健の未来を担う人材の育成も担います。SR2チームでは、DHTの体系分類(Taxonomy)によってどのように製品利用の遵守率(アドヒアランス)が異なるのかなど、サブグループ別の解析を担います。薬物介入に比べ、非薬物介入の遵守率は一般的に低く、遵守率は短期間のwebベースの介入(平均10週、週1回程度の介入)で50%( Kelders SM et al, 2012)程度、比較的最近の調査ではヘルスケア・アプリの多くは1週間以内で利用率はほぼ10%程度まで低下してしまう(Baumel A, et al., 2019)など、DHTの介入効果を適切に解析するためには遵守率の知見は重要となります。
ガイドライン作成チーム
小島原班
20年以上にわたるMinds診療ガイドライン作成支援委員の経験を持つ小島原教授がリーダーを務めます。ガイドライン作成グループ副代表として、本指針策定の指導・監督の重要な役割を担います。産業保健領域におけるDHT介入の一次予防指針をとりまとめて作成するとともに、Minds診療ガイドライン2020に沿ったSRセミナー(R5年度)および推奨セミナー(R6年度)を定期的に開催して若手人材育成に貢献します。
1. システマティックレビュー(SR)セミナー2023
Mindsでは、GRADEシステムを採用してテンプレートを作成することでシステマティックレビューのエビデンスから推奨を作成する手順が公開されています。本セミナーでは、Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020を参照した年6回の講義(オンライン併用)において、テンプレートの作成の要点の解説を通して、診療ガイドライン作成手順の基礎的な知識を身に付けます。
更に、演習希望者には、各自のヘルスケアクエスチョン(HQ)について推奨作成案の作成までのテンプレートを実際に作成することを支援します。実際の作業を行うことによりシステマティックレビューチームのメンバーに必要な技能を習得できます。
回数 | 日時 | 主な内容 | 講師(敬称略) |
---|---|---|---|
キックオフ |
2023年2月25日(土) |
AMEDプロジェクトの概要 Mindsからご挨拶 アプリの評価と課題 診療ガイドラインの作成概要 |
榎原毅(産業医科大学) 奥村晃子(Minds) 小泉志保(京都大学) 小島原典子(静岡SPH) |
第1回 |
4月14日(金) |
AMEDヘルスケア社会実装基盤整備事業の概要 CQ設定 文献検索 |
中山健夫(京都大学) 森實敏夫(Minds) 河合富士美(聖路加国際大学) |
第2回 |
6月17日(土) |
スクリーニングと文献集合の確定 Adolopment |
佐々木八十子(静岡SPH) 森實敏夫(Minds) |
第3回 |
8月5日(土) |
バイアスリスクの評価 PICOによる質的統合 |
森實敏夫(Minds) 森寛子(静岡SPH) |
第4回 |
10月7日(土) |
メタアナリシス SOFテーブルの作成 |
森實敏夫(Minds) 佐々木八十子(静岡SPH) |
第5回 |
12月9日(土) |
推奨作成 ガイドライン草案の作成 |
佐藤康仁(SPH) 佐々木八十子(静岡SPH) |
第6回 |
2月24日(土) |
AGREE評価、外部評価の対応 演習参加者の成果発表 |
森實敏夫(Minds) 全員 |
2. 推奨セミナー2024
以下の学修目標を習得するプログラムを検討しています。
【学修目標】
- ガイドライン作成において適切なCOI管理ができる。
- 重要健康課題からヘルスクエスチョンを設定し、スコープを作成できる。
- Minds診療ガイドライン作成マニュアル2020に沿って作成方法の概要について説明できる。
- GRADE Adolopmentに沿って既存のガイドライン・SRの適応について検討できる。
- システマティックレビューチームが作成したシステマティックレビューに関するレポートを解釈できる。
- Summary of Findings (SoF)テーブルを作成できる。
- Evidence-to-Decision (EtD)フレームワークを作成できる。
- EtDフレームワークを用いて推奨を作成できる。
- AGREEII reporting checklistに沿ってガイドライン評価し、外部評価の実施と適切な対応ができる。
- 改訂を見据えた、ガイドライン公開後のタスクについて説明できる。