Future Research Questions

Future Research Question 2「技術革新に対応するためのバックキャスティング型思考による調査研究デザインおよび対策立案の必要性」

技術の進歩は2年ごとに2倍の性能になるといわれています(ムーアの法則)。事実、我々の予測をはるかに上回るスピードでAI(Artificial intelligence)やVR(Virtual reality)等の製品がリリースされています。これらの技術革新が浸透することにより新たな働き方が生まれ、新たな健康影響が発生することは、想像に難くありません。従って、将来像を予測し、想定される健康影響問題に対して予め検討し、実際に発生する前に先回りして対応を行う、即ちバックキャスティング型の対応が必要となります※1。

本プロジェクトのTRでは、このバックキャスティング型思考に基づいてDHTの技術分類※2に基づいた今後の技術動向の予測を行いました※1。その結果、2023年に2005件であった音声感情解析に関する研究が2022年には11968件となり、現在は世界中で最も研究が行われている領域であることがわかりました※1(TR記事参照)。また、VRを含むアバターやメタバースに関する研究も2003年には90件、2013年には181件でしたが、2022年は1159件と急増しているため、今後は製品化に拍車がかかることが予測されます※2。

これらの急増する革新的技術に対する課題として、音声感情解析には、ユーザーの確証バイアスに対するリテラシー教育、個人情報の取扱い基準、偶発所見への対応などがあり※3、VR技術であればヘッドマウントディスプレイ使用による眼精疲労・筋疲労や頭部・顔面部接触圧等に加えて、中長期的な健康影響に関する調査の必要性などが想定されます※4(TR記事参照)。

従って、サービス提供者・開発者はこれらの点について熟考する必要がある他、行政施策を含めた対応に加えて、これらの課題解決のためのバックキャスティング型思考による社会実装型の調査研究が必要となります。

■引用文献

  1. Tani N, Yamaguchi C, Tsunemi M, et al. Ergonomic strategies for Digital Occupational Health: Preparing for the oncoming wave of technological innovation. Environ Occup Health Practice. 2024; 6: eohp.2023-0028-CT.
  2. Tani N, Fujihara H, Ishii K, et al. What digital health technology types are used in mental health prevention and intervention? Review of systematic reviews for systematization of technologies. J Occup Health. 2024;66(1):uiad003. doi:10.1093/joccuh/uiad003
  3. 石村妃君智, 堀裕輔, 本荘響, 谷直道, 藤原広明, 榎原毅. メンタルヘルス対策としての音声感情解析とその社会実装に向けたリサーチ・イシュー. 人間工学. 2024;60(4):205-210.
  4. 小森拓夢, 酒井一輝, 谷直道, 藤原広明, 榎原毅. 没入型VRの労働場面への応用に関し,産業保健上考慮すべき リサーチ・イシュー. 人間工学. 2024;60(5):260-267.