HQ_14 メタバースやXR(クロスリアリティ)技術などの仮想世界を活用したメンタルヘルス予防サービスを将来導入する際に懸念されることは?
本記事の対象者
(●)サービス利用者向け(個人ユーザ・産業保健スタッフなど)
(●)サービス事業者向け(開発企業・サービス提供関係者)
(●)学術関係者・行政担当者向け
要約
学術データベースであるPubMed(パブメド)を使用して、バーチャル・リアリティー(VR)などの副作用を扱う論文を調べました。その結果、VRやARの中長期使用に関する健康影響(身体面・心理面)を調べた調査は無いことがわかりました。これから、さらなる実践研究や応用研究を実施する必要があります。
1.何を調べたの?
この記事では、クロス・リアリティ(XR)のうち、近年普及が進んでいるバーチャル・リアリティ(VR)について、これまで得られている副作用に関する知見を調べました。
主に学術データベースであるPubMed(パブメド)を使用して系統的レビュー論文を複数調査するアンブレラ・レビューという方法で調査しました。※1
2.どんなことが分かったの?
今回の調査では、VRの使用に関連していると考えられる身体的な症状としてVRISE(virtual reality induced symptom and effect)や、Cyber sicknessという総称で呼ばれていることがわかりました。
これらに含まれる症状としては、眼精疲労やVRのヘッドマウントディスプレイ使用による頭部・顔面部接触圧などの不快感、筋疲労、吐き気、姿勢不安定などがあるようです。※2,3
また、認知面では高認知負荷による急性ストレス反応、パフォーマンス低下、精神症状の悪化などがあるようです。※2,4
また、VRの中長期的使用に関する副作用の研究はなく、長期間使用を継続することで、どのような症状・副作用が発生するかはまだわかっていません。
さらに仮想空間(メタバース)上のアバターの使用を継続し続けることで現実世界の行動特性に影響を与える可能性も指摘されています(プロテウス効果)が、このメカニズムに関する研究も不足しています。
3.この記事はどんな役に立つの?
この記事では、主にVRやメタバース上でのアバター使用が人の身体的・精神的に与える影響を紹介しました。しかし、その知見は非常に限られていました。今後は、学術領域の研究者を中心として、VR・アバターを使用した場合の中長期的な副作用(身体的・精神的)に関する研究や普及実装に関するさらなる知見の蓄積が必要です。また、サービス提供者側も使用者が増えるとともに蓄積される各種の健康影響データ・フィードバック情報を積極的に開示していく必要があります。
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