Future Research Questions

Future Research Question 1「DHTアドヒアランス調査の必要性」

1.アプリケーションの遵守率

今回、本プロジェクトのSRが対象とした文献はデジタルヘルステクノロジー(DHT)介入を行ったランダム化比較対照試験(RCT)のみでした(解説コラム参照)。しかしながら、RCTにおける介入プログラムの提供には人が介在することから、リアルワールドで人の介在による影響を一切受けない場合のDHT遵守率(アドヒアランス)よりも高くなり、結果としてリアルワールドで使用する場合の効果よりも、より高い効果になっている可能性があります。事実、先行研究ではアプリケーションをインストールしても1週間で9割が使用されなくなるというデータもあります※1。

2.リアルワールドデータによる検証の必要性

今後のDHT市場におけるエビデンス蓄積の動向としては、RCTによる効果検証後に製品化されるケースと、実際に提供を開始したサービスを運用する中でリアルワールドの利用データを収集・評価するアジャイル型の効果検証が行われることも想定されることから、サービス提供者あるいは学術関係者はアドヒアランスを明示的に示す必要があると思われます。

3.アドヒアランスの標準報告指標の整備

一方で、アドヒアランス調査が不足しているという限界に触れた論文は少ないことに加えて、アドヒアランスに関する論文内記述の画一的な指標もないため、DHTのアドヒアランスについて記述されている研究は限定的です。これは、メンタルヘルスの予防領域に限らず、DHT共通の課題であることから、早期にアドヒアランス調査スキームを整える必要があります。

4.デジタルフェノタイプとアドヒアランスの関連性

デジタルフェノタイプ(個人のアプリケーションの嗜好性)によるアドヒアランスの違いも考慮する必要があります。

■引用文献

  1. Baumel A, Muench F, Edan S, Kane JM. Objective User Engagement With Mental Health Apps: Systematic Search and Panel-Based Usage Analysis. J Med Internet Res. 2019;21(9):e14567. Published 2019 Sep 25. doi:10.2196/14567