第97回日本産業衛生学会にて、「デジタルヘルステクノロジ(DHT)を 活用したメンタルヘルス予防介入ガイドライン事業」についてシンポジウムを行いました
- 日時:2024年5月25日(土)
- 場所:第3会場(広島国際会議場)
令和6年5月22日~25日に開催された第97回日本産業衛生学会において、日本医療研究開発機構(AMED) の令和6年度 「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業(ヘルスケア社会実装基盤整備事業)」(以下、本事業)の進捗状況報告や意見交換のためのシンポジウム(以下、本シンポジウム)を開催いたしました。
本シンポジウムでは、経済産業省より行政のお立場、デジタルヘルステクノロジのサービス提供者のお立場、アカデミアのお立場からそれぞれデジタルヘルステクノロジに関する話題をご提供いただきました。
■経済産業省における予防・健康づくりに向けた取り組み
小栁 勇太 様(経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課)
経済産業省のお立場から、高齢化社会・健康寿命延伸に対するミッションに対応すべく、2050年までに公的保険以外のヘルスケアの国内産業規模を77兆円の市場とすることを目標に健康経営やパーソナルヘルスレコード(PHR)などの取り組みを行っていることや、そのような時代背景の中で本AMED事業の位置づけについても解説いただきました。また、職域における心の健康関連サービスの活用に向けた研究会の取り組みについてもご紹介いただき、将来展望として本事業との共同体構想についても触れていただいたことで、総合討論での有機的なディスカッションにつながりました。
■メンタルヘルスアプリを提供して見えた現状と課題
小川 晋一郎 様(株式会社Awarefy)
サービス提供者のお立場から、メンタルヘルスアプリの実例を通じて、現状の課題としてデジタルヘルスアプリによる認知行動療法サービス提供のコストパフォーマンスの実情や、サービス利用者(個人)は一次予防に対して投資をしないこと、三次予防でのニーズが高い、法人・企業側からは一次・二次予防の領域のサービスであっても継続利用は難しいと思われているという実態をご紹介いただきました。また、医療機関と連携することで利用率が30%に上がることから、アプリ単体ではなくプラスアルファとして専門職が介在することの重要性について触れられたことで、産業医・産業看護職の必要性をフロアの皆様にも認識いただくことに繋がりました。
■デジタルメンタルヘルスの技術動向と産業保健への応用
山口 知香枝 先生(金城学院大学看護学部看護学科)
本事業におけるトレンドリサーチの進捗報告について、デジタルフェノタイプに関する話題提供、デジタルヘルステクノロジの技術領域ならびに技術動向、一般労働者へのアンケート調査結果(個人利用ではなく、企業を通すBusiness-to-Business-to-Consumerの利用モデルが7割、ストレスチェックサービスが75%など)などの調査結果をご紹介いただきました。
■システマティック・レビュー・チームの進捗報告
金森 悟 先生(帝京大学大学院公衆衛生学研究科)
本事業におけるシステマティック・レビューチームの進捗報告について、レビュー体制(約30名の研究者がレビューを実施していること)、一次スクリーニングの結果、19,091件の論文が抽出され、最終的に二次スクリーニングの結果153件まで論文が絞られたこと、HQ別に論文を精査しており、現在はレビューチームにおいて論文の質の評価などを実施していること等が報告されました。
■総合討論
総合討論では、ユーザーインターフェース(UI)の影響・効果をどのように考えるかという点からアドヒアランスの重要性など、ヘルスケアにおけるデジタルメンタルヘルスの課題についてもフロアと共有する機会になりました。また、海外のRCTの実施状況に関するご質問や諸外国との利用率に関するご質問、利用者に使用してもらうための仕掛けづくりなどについて議論が交わされました。さらに、ヘルスケア産業の基盤整備の速度感についてもご質問があったことで、行政・企業・アカデミアが連携していくことの重要性や共同体構想への行政・企業・アカデミア間の相互ニーズについても意見交換をする貴重な機会になりました。
本記事報告者:谷直道(産業医科大学)