日本労働科学学会2023年度秋部会にて、「産業保健におけるデジタルメンタルヘルス~利用実態とステークホルダーニーズ~」について話題提供を行いました
- 日時:2023年12月2日(土)
- 場所:オンライン
本事業の全体像として、ヘルスケア産業の市場規模の拡大に伴って新たなサービスや製品が増加することが想定されているが、それらは玉石混合であるため本事業において指針を提案することの必要性について説明がなされた。
次いで、デジタルヘルステクノロジー(DHT)の定義の紹介や海外と比較してDHTの普及が遅れていること、DHT普及の際の配慮事項、薬機法も交えた日本のDHTサービス展開の状況や、DHTアプリなどは受け身での使用であり、予防健康増進のための投資はあまり行われていないことなどについて解説された。
また、江口班が多様なステークホルダーのニーズを把握するために取り組んだ一般労働者向けインターネット調査の結果(国内のデジタルメンタルヘルスアプリなどは企業向けが多いこと、利用したきっかけは勤務先の健康経営の一環として受け身で使用していること、一定以上の金額を支払ってまで使用することが少ないこと、ストレスチェック関連のアプリの使用頻度が高かったこと、現時点では比較的若年層が使用していること、アプリの益と害、アプリインストール後の使用頻度の低さ、ドイツのDHTアプリ評価の仕組みやサービス提供者側の品質向上に寄与する評価体制の整備の必要性など)について説明された。
■参加者との質疑応答・意見交換
・桜美林大学 山口有次先生
*Q:世界スタンダートと日本で差があるようだが、海外ではガイドラインが既に整備されているのか?
A:海外では民間団体、学術団体、公的機関等がガイドラインを作成している(江口、榎原)。
*Q:エビデンスの整理が重要であると思うが、世界的に研究成果が論文としてまとめられているのか?またデータベースのようなものはあるのか?
A:諸外国ではレーティングサービスがある(江口)。また、疾病予防と科学的根拠に基づいた医学の国内専門家からなるボランティア組織であるU.S. Preventive Services Task Force(米国予防サービスタスクフォース)のケースもある(榎原)。
・大原記念労働科学研究所 坂本恒夫所長
*Q:スマホで歩数計測のようなものは多くの人が使用している。このような技術がなじむとDHTの必要性が広まっていくのではと感じた。企業経営の観点からDHT使用に関する問題を掘り下げるというアプローチはされているのか?
A:大きな企業においては健康経営の側面から取り組みがされている(江口)。また、人的資本管理の流れの中にDHTやDXをどのように組み込んでいくべきか、今後議論が必要である(榎原)。
本記事報告者:谷直道(産業医科大学)