Future Research Question 14「デジタルヘルステクノロジの個人情報に関する適切な取り扱いに関する学会方針の整備」
DHT技術の進歩により、今後はDHTを用いた介入研究や企業との共同研究なども増加することが考えられます。DHT技術を用いた研究における個人情報の取得について、不測の事態を避けるためにも以下のような懸念事項を考慮した方針の検討が必要です。
1.生体データの取り扱い
DHT介入では、ウェアラブルデバイスや健康管理アプリを通じて様々な生体データ(音声、顔表情、心拍数、睡眠パターンなど)を収集することが可能になります。これらの生体データを含む適切な研究への同意や研究しようするデバイスのセキュリティ対策については、これまで以上に活発な議論と早急な方針の整備が必要です。
2.データ収集・転送時の脆弱性
ウェアラブルデバイスやスマートフォンからクラウドへデータを送信する際、通信が暗号化されていないと第三者がデータを傍受して改ざんできる可能性があります。多くの生体データを有するDHT介入データは悪意あるハッカーの対象となる可能性もあることから、これまで以上のセキュリティ対策に関する議論が求められます。
3.同意なしのデータの研究利用や二次利用の明確なルール化
個人情報保護法では、個人情報の第三者提供には本人の同意が必要とする一方で、同意が不要となるケース(例:共同研究先企業がデータを収集して匿名加工情報として大学や研究所へ提供する場合)も存在しています。特に画像や音声などの個人情報を含むDHTデータはプライバシー侵害に抵触しないようなデータ処理を行ったとしても同意なしデータを使用して良いのか、二次利用してよいのか改めて議論する必要です。
行政や民間事業者団体では、既に個人情報やプライバシーに配慮したAI関連のガイドライン整備に乗り出しています。これらを参考にDHTの利用において、個人情報の適切な取り扱いとプライバシー保護について各学会において再考し、改正個人情報保護法や関連ガイドラインを遵守しつつ、使用者(研究対象者)の信頼を担保できる方針の立案が求められます。
■引用文献
- 経済産業省.AI事業者ガイドライン(第1.0版).https://www.meti.go.jp/press/2024/04/20240419004/20240419004.html
- 日本デジタルヘルス・アライアンス.ヘルスケア事業者のための生成AI活用ガイド.https://jadha.jp/news/news20250207.html