Future Research Questions

Future Research Question 13「生理計測の限界および信頼性・妥当性情報の担保方法の検証」

 本指針において、ヘルスケアクエスチョン8の「心拍などのバイオ・フィードバックを利用したDHT介入は労働者のメンタルヘルス疾患の発症予防に有用か?」については、エビデンスが不十分であったため、推奨を保留しました。
 具体的には、心拍推定のバイオ・フィードバックの定義が定まっていないことから、各プログラムの心拍測定精度には大きなバラツキがあることが考えられます。心拍推定に限ったことではないが、生体計測を伴うDHTプログラムは、サービス使用者が使用している環境下において正しい計測が行えているのか、また信頼性と妥当性をどのように担保するのか、は極めて大きな課題として残っています※1。
 生体反応を計測して定量化し、それを本人にわかる形で提示してよりよい状態になるように自己制御するというのがバイオ・フィードバックのコンセプトであるが、現状のDHT関連サービスではRawデータの取得が難しく、加工したデータのみがユーザーに提示されており、どのような解析が実行されているのか不明でブラックボックスであるといった課題も挙げられています※1。
 これらの点において、サービス開発者・提供者は、「計測原理や精度は正しく説明できているか」、「計測不備やデータ欠損の可能性や対応策を開示しているか」という点を考慮し、心拍推定バイオ・フィードバックの標準的なプログラム開発なども検討する必要があると考えられます。

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■引用文献

  1. 日本人間工学会PIE研究部会,大須賀美恵子,栗谷川幸代,他.日本人間工学会第64回大会 企画セッション デジタルテクノロジーを活用したメンタルヘルスケアと人間工学 - 生理心理計測の応用可能性と技術課題 -.人間工学.2023;59(6):285-287.